本屋としての考え方

コンセプト

たくさんのモノが作られては捨てられ、
本当か嘘かもわからない情報があふれるいま。

そもそも本当に大切なものは?
必要な情報とは?
そんな内から発する声が
聞こえにくくなっているような気がしています。

昔に比べて豊かになったのかもしれません。
でも、
意味や価値、手触りの感じられるようなものは隅に追いやられ、
工業的で画一的なものがもてはやされる。
心のない商品を無理矢理選ばされている感覚は、
どうしてもぬぐえません。
この満たされない思いのようなものは、
私だけでなく多くの人が
感じているような気がします。

本の世界に目を移しても、
今の社会を映すかのように、
特定の国や人種や性質を持った人たちを
一方的に叩く内容のものや
とってつけたような上っ面の技術をもてはやす書籍が
今この瞬間もたくさん作られています。

そんな時代の雰囲気を考えると、
「あえていま本というものを売る意味は?」
という質問には、ちょっと答えあぐねてしまうのが正直なところ。
その逡巡は、おそらくずっと続きます。

それでも世の中には、
行く道をちらりと照らす灯台のような
人生をそっと支えてくれる杖のような
ささくれた心をやんわりと丸くする薬のような
人の心をざくっと耕すような
素晴らしい書籍がたくさんあります。

こんな時代だからこそ
「本という物」の持つ力を信じて。

がっと組み合って人生と向き合えるような本。
ながく本棚に置いて眺めたくなる本。
折に触れて読み返す本。
自分に、家族に、大切な人に贈りたくなる本。
あたかも手触りがあるかのような素敵な本を
手渡すように
小さく売っていけたらと思っています。

一度読んでさようなら、ではない
長くあなたに寄り添う一冊を。
らくだ舎の本屋が
その出合いのきっかけになったなら
こんなに嬉しいことはありません。

2020.1 らくだ舎 千葉